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若しも貴方にとって世界で一番大切な人がゐるのなら其の人は如何樣な人ですか?

 私に取っての一番大切な人はお姉ちやんです。

 或る時私は或る禍に卷き込まれてゐました。其の禍は將に凄慘たる有樣でした。肇めは何処からともなく漂ひて來た潮の樣な薫りでした。其の薫りは嗅ぐと息絶ゆまで男も女も命を婚ぐ事しか考へられぬ獸へと落魄れ猶且つ其の獸よりも其の薫りが為ると言ふ魔の薫りで有りた。須臾爲ると私を除きた洽く都の人々は獸へと墮ちました。

お姉ちやんは其の禍より幼き日の私を救ひ給ひ然して身寄り無きな私を妹宛らに育て給ひた妖怪です。

 其の時のお姉ちやんは迚󠄀も〳〵〳〵綺麗で然してかっこ良くて、後になりて思ひ返して觀ると彼の時、私の生きる意味はお姉ちやんに成ったのであらうかと思ひます。

 其れよりお姉ちやんと倶に至福の日々を過ごしました、然し其の日々は唐突に人の手に因りて不意に終はりを告げました。

 お姉ちやんが妖怪の類ひだと言ふを事が何處よりか漏れて、貴族の使はした兵に滿身創痍に爲れて、然して其の後お姉ちやんはお姉ちやんの母を名乘る妖怪に何處かに拐かされました。 其れよりお姉ちやんの爲に、然うお姉ちやんに食べて貰ふ爲に頑張りました。

 美味しく食べて貰ふ爲にお姉ちやんと同種の妖怪にどの樣な人間が美味しいか聽き、お姉ちやんの好みを推測し然う成れる樣に努力を爲、其れと並行爲て八百万の星々をお姉ちやんを搜し歩き、幾星霜が經ちました。お姉ちやん見附かるといいな。

 昔の話は此處迄に爲て今私がゐる國の話でもしましようか。

 其の國は海の中にある國で、幾つかの村や其れを圍む田畑等があり又城があり其の城を囲む樣に城下町が有り、其れ等總て泡に包まれた樣な容を爲てゐます。

其の國の人たちは昔の樣に皆性に奔放で、其れにつきて通り掛かりの女に何故かと問ふと、此の國を肇め、今も此の國を守りてゐる神が海と媾合の神だからとの答へが返りて來た。

女は「若しかして貴方は神様が搜し求めて久しい『妹』ですか。」と言ひました。何でも此の國の神が私宛らの容姿を爲た女と生き別れ、其の女を探し歩きてゐた時に其の神より御利益を授かりた人々の村が此の國の興りで 有り、此の國の民は其れを幼き頃より聞きて育ち、神が生き別れた相手を探すために外界へ行くのだ然うです。

斯くして私はお姉ちやんに繋がるかも知れぬ手懸かりを得る事が出來ました。

此の國の神はお姉ちやんかも知れない。據りて此の國の神に會ふ方法を搜し、此の國の神がお姉ちやんで有るかを見るのだ。然う私は思ひて逸る氣持ちを抑へてお姉ちやんとの再会を祈願爲る爲、神社に向かひたのでした。

而して私が神社で禱り、目を開けたとき、目の前には私の戀ふお姉ちやんがゐた。

然う、金絲の髮、紅玉の瞳、然して雪の樣に白き肌。將に私が再会を冀ひてゐた淫魔のお姉ちやんだ。漸く會へた。さあ此よりどの樣な話を爲て、如何食ひ給はらうか。

 嘗てフエエを育てた淫魔の少女、リヽイは困惑爲てゐた。彼程搜さうが見附からぬより死にたと思ひてゐた妹、フエエが生きてゐて、自分を祀る社に禱りを捧げてゐたのだから。生き別れになりた妹であり初戀で有り猶且つ悲戀に終わりたはずの戀の相手が禱りを捧げて呉れたのだから。フユエに声を掛けぬ譯には行かぬで有ろう。

禱りを捧げてゐるフエエに後ろから抱きついてみれば目前の妹から感じる精氣が嘗て心を繋ぎた頃とは比較にもならぬほど強きのである。具體的にはリヽイが会ひたことがあるどんな人よりも強いのである。

「フエエ、旅の話を爲てくれないかな」

「先ず何から話したら良いのかな」

フエエは少し迷ひた樣な姿を見せながらもリヽイに旅の話を爲てくれた

「えっとねお姉ちやんが拐かされた事があつたでしょもうあんな事が起きないようにお姉ちやんが往んでから私ねお姉ちやんに強くなって貰ふために頑張つたの」

「どういふことだ?」

「ほら、淫魔つて性的な意味で食べた相手の力を奪へるでしよ」

「確かに……然うだな」

「だからね私が強くなつてお姉ちやんとえつちすれば私の力を」

「ぼくそんなのむり そんなのすつたらぼく爆發しちやう……」

「大丈夫だよ私お姉ちやんに食べて貰ふために頑張つてお姉ちやんの精氣との適合率上げたから」

「でも好きな人とはいへ妹とやるのはなんだか」

「お姉ちやん今私のこと好きつて言つた?言つたよね」

「言つたけど」

姉妹は離れ〴〵に成りてより今迄の噺を永き時間掛けて語らひながら倶に眠りにつきた。